遺言は人生の節目や環境の変化に応じて、内容を見直すことが大切です。古いままにしておくと、現在の状況に合わず、かえってトラブルの原因になることがあります。また、一度作成した遺言書を変更することもできます。遺言を作成した後に、財産の変化があったり、財産の分け方を変えたりなど、その内容を変更したい場合があるかと思います。そもそも遺言は自由に作成、変更、撤回ができます。
見直しが必要となる主なケース
以下のようね見直すべき事由が発生した場合には、遺言書の見直しをぜひご検討ください。
- 家族関係の変化:結婚・離婚・再婚、子や孫の誕生、養子縁組など
- 財産の変動:不動産の売却や購入、所有する会社の経営や事業、資産の変化、海外資産やペット関連費用の追加など
- 法律の改正:相続税や遺留分制度、配偶者保護制度などの改正により、想定した内容を変更すべき場合など
- 健康状態等の変化:自分や配偶者、相続人の健康状態等が変化し、遺言で対応する必要が生じた場合など。
遺言書の変更方法
自筆証書遺言書の場合
作成した遺言の内容を変更したい場合、変更する部分が軽微で負担なく変更できる場合は、自筆証書遺言書であれば直接その遺言の文章を変更できます(民法968条3項)。方法は、変更したい部分を示し、変更した旨、変更内容を書き、署名し、かつその変更の場所に印を押すことになります。
しかし、変更が多い場合などは、新たに遺言を一から作成するほうがよろしいでしょう。遺言は最も新しい日付の遺言が優先され、また、遺言が複数ある場合は、内容が抵触する部分は新しい遺言が優先されるため、原則として新しい遺言を書けば前の遺言を変更できるのです(民法1023条)。実務上、新たに作成することがほとんどです。
財産目録の変更については、パソコン作成や通帳コピー添付も可能ですが、変更した場合は各ページに署名押印が必要となります。
公正証書遺言書の場合
公正証書遺言書は、公証人が作成し、原本が公証役場に保管されるため、後から書き換えたり一部を修正したりすることは不可能です。したがって、公正証書遺言の内容を変更したい場合は、必ず新しい公正証書遺言書を作成する必要があります。
新しい公正証書遺言書も作成方法は前回の公正証書遺言書の作成方法と同様ですので、公証人役場にて公証人が証人2人のもとで作成することとなります。なお、新しい遺言が前の遺言と抵触する部分は、前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条)。
遺言の撤回とは
「遺言の撤回」とは、遺言者が成した遺言を、後からその全部または一部を取り消すことをいいます。民法第1022条で「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と定められています。
新しい遺言書の作成
上述のとおり、後の遺言が前の遺言と抵触する部分は、前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条)。
遺言書や財産の破棄
遺言書を故意に破棄した場合、その遺言は撤回されたとみなされます(民法1024条)。遺贈の目的物を破棄した場合も同様に撤回したものとみなされます。
生前処分による撤回
遺言書で「Aに〇〇の土地を相続させる」としていても、遺言をした後にその土地を売却すれば、その遺言部分は撤回されたものとみなされます(民法1023条2項)。
遺言書は「一度書いたら安心」というものではありません。
遺言書の見直しを怠ると、相続人間で解釈が分かれ、争いの火種になることも考えられます。また、財産が遺言に記載されていないため、遺言の効力が及ばず、法定相続となる場合もあります。遺言者の真意が反映されず、希望通りの承継ができないということにならないように見直すことが重要です。
遺言の見直しはぜひご相談を
定期的な点検、または大きなライフイベントの後に見直しをお勧めします。そして、見直しに際しては行政書士等の専門家にぜひご相談を。方式不備や法改正への対応は専門家に相談することで安心です。
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