遺言とは、民法第960条以下に定められ、遺言者本人の最終意思を法律上有効に残すための制度です。遺言は相続人間の紛争防止、被相続人の財産承継の意思の実現といった重要な役割を果たします。

遺言は民法によって方式が定められており、それに従う必要があります。以下、遺言の方式について整理します。

遺言書にも種類があります

遺言書の作成にもその方法によって大きく3つの方法、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。ご自身の状況、お考えによって選択してください。

自筆証書遺言(民法第968条)

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印をして作成する遺言書です。要件としては、

  • 全文、日付、氏名が自書であること(但し、2019年の民法改正により遺言に添付する「財産目録」はパソコンや代書での作成が可能です。)
  • 日付を特定すること(※1月吉日という記載や13月35日というような暦にない日付は日付を特定できないため無効となります。また、日付のスタンプを押した場合も自書していないので無効となります。)
  • 押印があること(実印を推奨します。遺言書に印鑑証明を付することも有効です)が必要です。
  • 遺言書の保管は、遺言者自身で保管する方法のほか、2020年7月10日施行の法務局「自筆証書遺言書保管制度」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html)を利用し、法務局が保管することで遺言書の偽造や紛失を防ぐことができます。なお、この法務局保管制度を利用すると、相続開始時における家庭裁判所の「検認」手続きが不要となります。

公正証書遺言(民法第969条 第969条の2)

公正証書遺言は、証人2名の立ち合いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がそれを筆記して作成するものです。原則として公証人役場において作成することとなりますが、特別な事情がある場合には公証人に出張して対応していただくことも可能です。なお、公正証書遺言の作成には公証人に対する手数料がかかるほか、証人を2人立てることが必要です。証人が立てられないときは、公証人役場での紹介も可能です。公正証書遺言は公証人役場で保管されますので、偽造、紛失の可能性はありません。

秘密証書遺言(民法第970条~第972条)

秘密証書遺言は、遺言書を作成したのち封印し、それを公証人が遺言者の遺言であること及び封印されていることを証明する遺言方式をいいます。この方法では、遺言の内容を遺言者以外には秘密にしておくことができます。この秘密証書遺言をする場合は、遺言者は遺言の全文、日付を記載し、署名、押印(実印をお勧めします)し、その印鑑をもって封印します。

なお、秘密証書遺言に不備があった場合でも、自筆証書遺言の要件を満たしている場合は自筆証書遺言としての効力があります(民法第971条)。

<自筆証書遺言と公正証書遺言の比較>

自筆証書遺言公正証書遺言
作成者遺言者遺言者が趣旨を口授し公証人が作成
証人不要2人必要(家族や親族は承認になれません。公証役場で選任してもらうことも可能です。)
作成費用かかりません公証人へ手数料がかかります。
家庭裁判所の検認必要
(但し、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要。)
不要
保管方法遺言者が保管管理。但し、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局で保管可能。公証人役場で保管
メリットいつでも書ける。書き直しができる。
費用がかからない。
遺言内容を秘密にできる
原本を公証役場で保管するので偽造や変造の危険がない。
公証人が作成するため無効になる可能性が極めて低い。
家庭裁判所の検認が不要。
自筆できない場合も作成できる。
デメリット紛失、変造、偽造の危険がある。
法定要件を満たさない場合や内容に不備があれば無効になる可能性がある。
裁判所の検認手続きが必要(法務局の保管制度を利用しない場合)
利害関係のない証人が2名必要で、公証人と証人には遺言の内容が知られてしまう。完全な秘密保持はできない。
費用がかかる。

遺言の方式を選ぶ時の注意点

遺言書の種類を選ぶ際には、メリット、デメリットをしっかりと確認し、依頼者の状況や目的に応じて適切な方式を選ぶことが重要です。

  • 財産の規模・種類:不動産や海外資産がある場合は公正証書遺言が望ましい。
  • 相続人間の関係性:紛争防止を重視するなら公正証書遺言。
  • 秘密保持の必要性:秘密性を重視するなら自筆証書遺言や秘密証書遺言。
  • 費用と手間:費用を抑えたいなら自筆証書遺言がコストはかからない。

遺言作成のすすめ

遺言は相続をめぐる争いを防ぎ、大切な家族の安心を守ります。財産の承継方法を自分の意思で決められます。また、介護やペットの世話など、想いを「付言事項」として残すことも可能です。

「まだ早い」と思っている方も、突然の事態はいつ起こるかわからないものです。遺言書があればご自身の想いを未来につなげることができるのです。

  • 「あなたの想いを、確かな形に。」
  • 「家族の安心は、遺言から始まります。」
  • 「遺言は“もしも”に備える、最良のプレゼント。」

行政書士がお手伝いできること

  • 法律に基づいた正しい方式のご案内
  • 遺言内容の文案作成・チェックリスト提供
  • 公証役場での手続きサポート
  • 国際相続やペットに関する特別なご希望にも対応

行政書士は遺言の作成を全面的にサポートいたします。ぜひご相談ください。

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