
帰化とは、その国の国籍を有しない者(外国人)からの国籍の取得を希望する旨の意思表示に対して、国家が許可を与えることによって、その国の国籍を与える制度です。日本では、帰化の許可は、法務大臣の権限とされています(国籍法第4条)。在留資格は外国人が日本に滞在するための資格ですが、帰化は日本国籍を取得して日本人となる手続きのことです。
法務大臣が帰化を許可した場合には、官報にその旨が告示されます。帰化は、その告示の日から効力を生ずることになります(国籍法第10条)。
日本における年間の帰化人数は7000人から8000人程度で推移しています。最も多いのは、韓国・朝鮮籍の方で、年間2000人程度、ついで中国からの帰化も多く、やはり年間2000人程度でそれぞれ全体の約30%を占めています。
日本と特別な関係を有する外国人(日本で生まれた者、日本人の配偶者、日本人の子、かつて日本人であった者等で、一定の者)については、下記の帰化の条件を一部緩和しています(国籍法第6条から第8条まで)。
また、日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有していることが必要です。
帰化の条件は (国籍法第5条)
日本国に帰化をする場合、以下の最低条件を満たす必要があります。なお、これらの条件を満たしていたとしても、必ず帰化が許可されるとは限りません。日本の帰化審査には、法務局による厳格かつ多面的な確認が行われるのが特徴です。
1.住所条件(国籍法第5条第1項第1号)
帰化の申請をする時まで、引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。なお、住所は、適法なものでなければなりませんので、正当な在留資格を有していなければなりません。
具体例
- 5年間出国せず日本に居住:出国歴がないため、継続性が認められるので要件を満たす。
- 3年日本居住で1年海外生活し再び2年間日本居住:1年の海外滞在で「引き続き」が途切れるので要件を満たさない。
- 4年日本居住で1ヶ月海外旅行したがその後1年日本居住:海外旅行は一時的な出国として継続性を損なわないと思われるため、要件を満たす。
- 日本に留学4年、就職して3年経過(就労ビザ):就労して3年しか経過していないため、5年継続要件に該当せず、要件を満たさない。実務上は留学ビザ期間は原則「住所要件」に算入されないとされています。
- 10年前まで5年間日本に居住していた:申請時点までの引き続きの要件を満たしていない。
2.能力条件(国籍法第5条第1項第2号)
年齢が18歳以上であって、かつ、本国の法律によっても成人の年齢に達していることが必要です。これは「申請者が自己の意思で法的手続きを行える能力があるか」を判断するための要件とされています。
具体例
- 18歳のアメリカ人:アメリカも18歳で成年とされるため、条件を満たしている。
- 19歳の韓国人:韓国では20歳が成人年齢なので、条件を満たしていない。
- 20歳のインドネシア人:インドネシアでは21歳が成人年齢なので、条件を満たしていない。
- 親と同時申請する未成年は、親の申請に「付随」する形で認められることがあります。
3.素行条件(国籍法第5条第1項第3号)
素行が善良であることが必要です。審査対象は、過去から現在に至るまでの生活態度・法令遵守状況です。素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無や態様、納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮し、通常人を基準として、社会通念によって判断されることになります。
具体例
- 前科・犯罪歴:起訴・罰金・禁錮刑がある場合は原則10年間申請不可となる可能性が高いです。窃盗、暴行、薬物、風俗営業関与などの前科、犯罪歴がある場合などです。
- 交通違反:直近5年以内に軽微な違反でも5回以上ある場合は不許可の可能性が高いです。
- 税金の納付違反:住民税・所得税・事業税などの滞納は不許可となる可能性が高いです。
- 社会保険・年金:未加入・未納があると不許可の可能性が高いです。特に国民年金の空白期間もあってはいけません。
- 在留資格違反:不法滞在(オーバーステイや資格外活動歴)があると5年間は申請不可とされています。
4.生計条件(国籍法第5条第1項第4号)
一定程度の収入があり、日本での生活に困るようなことがなく暮らしていけることが必要です。申請者が日本で安定した生活を営める経済力があるかを審査する要件です。単なる収入の有無ではなく、継続性・安定性・家族構成とのバランスが重視され、生計を一つにする親族単位で判断されますので、申請者自身に収入がなくても、配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば、この条件を満たすこともあります。
具体例
- 独身で正社員の月収20万円の外国人:安定した雇用と生活水準が確認できると考えられ、条件を満たす。
- 3人家族で年収200万円の契約社員:家族構成に対して収入が低く条件を満たすとはいえない可能性が高い。
- 3人家族で自営業者。年収600万円:家族構成に対して収入があり、条件を満たす可能性が高いが、継続的な収入であることが必要。
- 留学生でアルバイト収入のみ:一時的収入で生活基盤が不安定であり条件を満たしていない。
- 資産・貯蓄だけでの生活:将来的に生活苦に陥る可能性があれば条件を満たしていないこととなる。
5.重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)
日本では原則として二重国籍を認めていません。従って、帰化しようとする方は、無国籍であるか、原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。なお、例外として、本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については、この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります(国籍法第5条第2項)。
具体例
- 日本の国籍法では、20歳未満で日本国籍を取得した重国籍者には、国籍選択の猶予期間が設けられていて、22歳になるまでに日本国籍を選択する必要があります。たとえば16歳で帰化して日本国籍を得た場合、22歳の誕生日までに「国籍選択の宣言」または「外国籍の離脱手続き」を済ませる必要があるということです。なお、18歳以降に重国籍になった場合は、その時点から2年以内に選択しなきゃいけないという別のルールもあるので注意が必要です。
- 外国国籍の離脱または放棄:日本において帰化許可を得てから、母国で国籍離脱・放棄の手続きを行い、本籍地または所在地の市区町村役場に外国国籍喪失届を提出
- 日本国籍の選択宣言:母国で国籍離脱・放棄の手続きがない等の場合、本籍地または所在地の市区町村役場に国籍選択届を提出します。
6.憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり、主張するような方、あるいはそのような団体を結成したり、加入しているような方は帰化が許可されません。
具体例
- 反社会的勢力やテロ組織に在籍している、又は過去に在籍していた、関係を持っていた場合などは許可されません。
- 申請者本人にとどまらず、親族や就業先など関係者も思想条件を満たしている必要があります。つまり、身内や勤め先の役員、取引先に反社がいる場合などは帰化は困難です。
7.日本語条件
帰化申請における日本語能力条件は、法令による明文化はないものの実質的な要件として実務上必要になります。具体的には、日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有していることが必要です。
- 会話:日常的な会話が支障なくできること。
- 読み書き:役所などの申請書類の内容を理解し、記入できること。
- 聴解:役所などからの質問に正しく答えられること。
帰化許可申請手続きの流れ
日本の帰化許可申請は非常に丁寧かつ段階的に進む手続きで、平均して9か月〜1年半ほどかかるのが一般的です。
| 流れ | 内容 | 所要期間の目安 |
| 法務局事前面談予約 | 管轄の法務局へ電話またはネットで事前面談を予約 | 1〜2週間〜1か月 |
| 事前面談 | 法務局で担当官と面談。質問シートの記入、要件確認・必要書類の説明あり。日本語能力の確認される。 ※事前面談で要件不備があれば申請はできない。 | 即日〜数週間後 |
| 必要書類作成及び収集 | 申請書他必要書類の作成、国内外の必要書類を収集・翻訳・整合性確認 | 2〜6か月 |
| 書類の事前審査 | 法務局で書類チェック。不備の修正など | 1〜2か月 |
| 申請受理 | 正式に申請の受理。審査開始される | 即日〜数週間後 |
| 法務局担当官による面接及び調査 | 本人面接、場合によっては家庭訪問、職場確認などの調査 | 受理から2〜3か月後 |
| 法務省による審査 | 法務局から法務省へ申請送付。最終許可手続き。 | 6〜8か月 |
| 許可/不許可通知・官報告示 | 許可/不許可の決定がなされ、官報に掲載。法務局で帰化許可書交付。 | 受理から10〜14か月後 |
帰化許可申請の主な必要書類(法務省発行「帰化許可申請の手引き」参照)
主な注意事項
- 用紙はA4判で作成すること
- 筆記具はペン又はボールペンで消えないもので書く
- 提出書類は原則2セット(1通は原本、もう1通はコピーも可)
- 外国語で書かれた書面は翻訳をつけ、翻訳者の住所、氏名、翻訳年月日を記載
- パスポートなど原本を提出できないものは写しを2部提出
- 提出する書類は事実を正確に記載すること。虚偽の記載は許可されない
主な必要書類
| 1 | 帰化許可申請書 | 帰化をしようとする人ごとに作成。署名欄は受付の際に自署する。 |
| 2 | 親族の概要を記載した書面 | 親族の範囲は、申請していない同居の親族のほか、申請者の配偶者(元配偶者含む)、親(養親含む)、子(養子含む)兄弟姉妹、配偶者の両親、内縁の妻又は夫、婚約者。日本居住の親族分、外国在住の親族分それぞれ作成。 |
| 3 | 履歴書 | 帰化をしようとする人ごとに作成。重要な経歴については証明資料も添付(卒業証明書、在職証明書、免許・資格証明書など) |
| 4 | 帰化の動機書 | 申請者ごとに自筆で作成(パソコン不可)。15歳未満の申請者は不要。 |
| 5 | 宣誓書 | 申請者ごとに作成。署名欄は受付の際に申請者が自署する。15歳未満の申請者は不要。 |
| 6 | 生計の概要を記載した書面 | 申請者及び生計を同じくする親族の収入、支出、資産関係について記載。月収は申請前月の金額を記載。不動産を所有している場合には登記事項証明書を添付。 |
| 7 | 事業の概要を記載した書面 | 申請者又は申請者の生計を維持している配偶者その他の親族が個人で事業を営んでいる 申請者が会社等の法人の役員の場合など。また、複数の事業を営んでいる場合は事業ごとに作成する。 |
| 8 | 国籍証明書 | 本国の官憲が発行した国籍証明書で有効期限のあるものはその期限内のもの。 旅券(パスポート)を所持している場合はその写し。 |
| 9 | 身分関係を証する書面 | 本国の官憲が発行した出生証明書、婚姻証明書、親族関係証明書、その他身分関係を証明する書面 |
| 10 | 国籍を有せず、又は日本の国籍を取得することによってその国の国籍を失うことの証明 | 法務局の担当者の指示があった場合に、本国の国籍を喪失した証明書を必要。申請者の国籍が、本国法によって日本国に帰化すれば当然にその国籍を喪失することが明らかである国(例えば韓国など)の場合は不要。 |
| 11 | 居住歴を証する書面 | 住民票の写しなど(個人番号、住民票コードが記載されていないもの) |
| 12 | 運転記録証明書 | 自動車運転免許証を持っている人は、自動車安全運転センターが発行した過去5年間の運転記録証明書 |
| 13 | 資産・収入・納税に関する各種証明書 | 収入関係:給与証明など 資産関係:登記事項証明書など |
| 14 | 社会保険料の納付証明書 | ねんきん定期便、年金保険料の領収書写し(直近1年分)、公的医療保険料の納付証明書、介護保険料の納付証明書など |
| 15 | その他の参考資料 | その他担当官から指示があった資料 |
帰化許可の申請先
帰化申請をしようとする者の住所地を管轄する法務局又は地方法務局(国籍事務取扱支局を含む)に相談、申請します。帰化しようとする者が15歳以上のときは本人が、15歳未満のときは親権者、後見人などの法定代理人が、法務局又は地方法務局に自ら出頭して、書面によってしなければなりません。
なお、申請には手数料はかかりません。
帰化許可の面接
面接では、帰化申請理由、収入資産、居住履歴、家族構成、犯罪歴、納税状況、社会保険納付状況などについて問われます。当然のことですが間違いなく正直に正確、丁寧に回答する必要があります。
許可/不許可の通知
許可の場合
- 法務局から電話連絡または郵送通知が行われます。
- その後、法務局に出頭して「帰化許可通知書」を受け取る必要があります。
- 帰化が官報に掲載された日が「日本国籍取得日」となります。
- その後、市区町村役場で戸籍編成の手続きを行います(通常は法務局から案内あり)。
不許可の場合
- 「帰化不許可通知書」が郵送で届きます。
- 通知書には不許可の理由は明記されていません。また、法務局に理由を確認しても説明されません。
- 再申請は可能ですが、前回の不許可理由を改善する必要がありますので、専門家に相談することをお勧めします。
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帰化申請は、法務局との面談や膨大な書類準備が必要な複雑な手続きです。
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