遺言とは

自分が亡くなったあとに、財産や大切なものを「誰に」「どのように」渡すかを決めておくための書面です。遺言がないと、法律のルールに従って財産が分けられます。そうなると、自分の希望と違ったり、親族間の話し合いでトラブルになることがあります。遺言があれば、自分の思いをはっきり残せるのです。

法律的には「遺言書」という形で残すことが多く、日本の民法でも厳格なルールが定められています。遺言は人の最終意思の表示として、遺言者の死後に効力を生じるものです。

遺言をしている人

日本で遺言書を作成している人の割合は非常に低く、特に60歳以上でも数%程度にとどまっています。年齢が上がるにつれて作成率は増えますが、全体的にはまだ少数派です。

日本財団「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」(2023年1月5日公表)によると、全国の60歳~79歳男女2000人にアンケートをとったところ「既に公正証書遺言書を作成している」は1.5%、「既に自筆証書遺言書を作成している」は2.0%で、遺言書作成済みの人は全体の3.5%にとどまっていますが、12.2%は作成予定ありとのこと。「しばらく作成するつもりはない」は35.7%、「今後も作成しない」は44.3%と、作成予定や意向が無い人は8割にのぼります。

日本公証人連合会の統計(令和6年公表)では、公正証書遺言の作成件数は 年間約12万8,000件。過去10年間の推移も10万件から12万件前後で推移しています。

法務省「自筆証書遺言書保管制度の利用状況」の制度開始(2020年)から2024年7月までの累計保管件数は 約79,000件 に達しています。

以上、遺言書を実際に作成している人は、60~79歳でもわずか3.5%程度。年齢が上がるほど作成率は高まりますが、依然として少数派ということがわかりました。但し、「作成したい」と考えている前向きなひとは、60代~70代の約15%となっており、今後の高齢化社会の進展において遺言書の作成はますまず重要な財産承継の準備方法です。

遺言の種類と特徴

遺言は「家族への安心のメッセージ」。どの種類を選ぶかは、費用・安心感・秘密保持のバランスで決めるのがポイントです。遺言の方法を定めている民法です。その中でも主に以下の3種類が一般的な方法です。

1.公正証書遺言(民法第969条 第969条の2)

公正証書遺言は、証人2名の立ち合いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がそれを筆記して作成するものです。

原則として公証人役場において作成することとなりますが、特別な事情がある場合には公証人に出張して対応していただくことも可能です。なお、公正証書遺言の作成には公証人に対する手数料がかかるほか、証人を2人立てることが必要です。証人が立てられないときは、公証人役場での紹介も可能です。公正証書遺言は公証人役場で保管されますので、偽造、紛失の危険がありません。

2.自筆証書遺言(民法第968条)

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印をして作成する遺言書です。要件としては、自書であること(但し、添付する「財産目録」はパソコンや代書での作成が可能です。)、日付を確定すること(1月吉日という記載ではいけません)、押印があること(実印を推奨します。遺言書に印鑑証明を付することも有効です)が必要です。なお、また、保管は、遺言者によりますが、遺言者自身で保管する方法のほか、2020年7月10日施行の法務局「自筆証書遺言書保管制度」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html)を利用し、法務局が保管することで遺言書の偽造や紛失を防ぐことができます。

3.秘密証書遺言書(民法第970条~第972条)

秘密証書遺言は、遺言書を作成したのち封印し、それを公証人が遺言者の遺言であること及び封印されていることを証明する遺言方式をいいます。この方法では、遺言の内容を遺言者以外には秘密にしておくことができます。この秘密証書遺言をする場合は、遺言者は遺言の全文、日付を記載し、署名、押印(実印をお勧めします)し、その印鑑をもって封印します。

なお、秘密証書遺言に不備があった場合でも、自筆証書遺言の要件を満たしている場合は自筆証書遺言としての効力があります(民法第971条)。

自筆証書遺言書と公正証書遺言書の比較

自筆証書遺言書公正証書遺言書
作成者遺言者遺言者が趣旨を口授し公証人が作成
証人不要2人必要(家族や親族は承認になれません。公証役場で選任してもらうことも可能です。)
作成費用かかりません公証人へ手数料がかかります。
家庭裁判所の検認必要
(但し、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は不要。)
不要
保管方法遺言者が保管管理。但し、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局で保管可能。公証人役場で保管
メリットいつでも書ける。書き直しができる。
費用がかからない。
遺言内容を秘密にできる
原本を公証役場で保管するので偽造や変造の危険がない。
公証人が作成するため無効になる可能性が低い。
家庭裁判所の検認が不要。
自筆できない場合も作成できる。
デメリット紛失、変造、偽造の危険がある。
法定要件を満たさない場合や内容に不備があれば無効になる可能性がある。
裁判所の検認手続きが必要(法務局の保管制度を利用しない場合)
利害関係のない証人が2名必要で、公証人と証人には遺言の内容が知られてしまう。
費用がかかる。

簡単に作れるが不備に注意 → 自筆証書遺言

安心・確実だが費用がかかる → 公正証書遺言

秘密を守れるが利用は少ない → 秘密証書遺言

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遺言は法的要件を満たす必要があり、また、大切なひとへの大事なメッセージになります。当事務所では、皆様の思いをしっかりとお聞きしながら最適な遺言書の作成をお手伝いいたしますので、ぜひご相談ください。

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