みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
遺言書は日付の新しいものが有効となりますが、日付が古いものでも、遺言の内容が新しい遺言書の中に記載されていない内容であれば有効となります。具体的なケースを見ていきましょう。
複数の遺言書がある場合の基本的な対応
遺言書の形式が法的に有効である(自筆証書、公正証書、秘密証書など)場合、日本の民法では、遺言者の最終意思を尊重するため、日付の新しい遺言書が有効とされます(民法第1023条)。
ケース1.内容が矛盾する複数の遺言書があるとき
遺言書同士の内容が矛盾している場合は、後に作成された遺言書が前の遺言書を撤回したものとみなされるのが原則です。撤回の意思が明示されていない場合でも、内容が矛盾していれば新しい遺言書が優先されると解釈されます。
(具体例)
- 2015年の遺言書:「長男に全財産を相続させる」
- 2025年の遺言書:「長女に全財産を相続させる」
この場合、日付の新しい2025年の遺言書が有効となります。
ケース2.新しい遺言書が前の遺言書の一部のみを変更している場合
新しい遺言書が前の遺言書の一部のみを変更している場合は、変更された部分のみが新しい内容に従い、それ以外は古い遺言書が有効となることもあります。
(具体例)
- 2015年の遺言書:「長男に全財産を相続させる」
- 2025年の遺言書:「長女に不動産を相続させる」
この場合、不動産に関しては2025年の遺言書が優先され、その他の財産については2015年の遺言書が有効となります。
ケース3.公正証書遺言書、自筆証書遺言書の両方があった
自筆証書遺言と公正証書遺言の形式の違いにかかわらず、日付が新しい方が有効です。日本の民法では、形式を問わず、遺言者の最終意思を尊重するため、日付の新しい遺言書が有効とされます(民法第1023条)。ただし、法定の形式を満たしている場合に限ります。
(具体例)
- 2020年に公正証書遺言を作成(長男に全財産を相続させる)
- 2023年に自筆証書遺言を作成(長女に不動産を相続させる)
不動産に関しては、2023年の自筆証書遺言が有効となり、長女が相続することになります。
ケース4.遺言書の下書きの効力は?
正式な遺言書を作成する前に、下書きをいくつも作成する場合も多いかと思います。下書きと言えども捺印などの法的要件を満たせば遺言書としては有効となりますので注意が必要です。日本の民法では、遺言書が有効と認められるためには、法定の方式を満たしているかどうかが最も重要です。つまり、本人が「これは下書きだから無効」と思っていても、以下の要件を満たしていれば法的には有効な遺言書とみなされる可能性があります。
自筆証書遺言の主な要件(民法第968条):
- 遺言者が全文を自筆していること
- 日付が記載されていること(年月日まで明記)
- 氏名が自筆されていること
- 押印があること(認印でも可)
これらを満たしていれば、たとえ「下書き」や「メモ」のつもりでも、正式な遺言書として効力を持つ可能性があります。下書きやメモはしっかりとシュレッダーするなど処分が必要です。
遺言者が「これはまだ確定していない」と思っていても、形式的に有効であれば、相続人間で争いの火種になる可能性もあります。下書き段階では、日付や署名・押印は避けることで、誤って有効な遺言書とみなされるリスクを減らせます。
「もしも」の前に、しっかり準備を。
遺言書は、残されたご家族への最高のプレゼントです。
財産の分け方だけでなく、感謝の気持ちや人生のメッセージも伝えることができます。
当事務所では、わかりやすい説明と丁寧なサポートで、安心して遺言書を作成いただけます。
ご自身の意思を、確かな形で残しましょう。
