被害者の損害賠償を請求する権利も、加害者の損害賠償する債務も相続されます

相続

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

毎日のように事件、事故のニュースを耳にしますが、事件や事故の損害賠償請求権(被害者側の権利)も、損害賠償債務(加害者側の義務)も、いずれも相続の対象になります。

根拠

損害賠償請求権は民法上の権利であり、主に以下の2つの原因によって発生します。

  • 不法行為:故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した場合
  • 債務不履行:契約上の義務を果たさなかった場合

犯罪行為の被害者、加害者については、民法709条(不法行為に基づく損害賠償)が、損害賠償請求権の法的根拠となります。つまり、加害者に落ち度(故意・過失)があり、損害との因果関係が認められれば、被害者は損害賠償を請求できます。具体的には、事件や事故で財産や身体などに損害が発生したときに、加害者から損害の弁償をしてもらえるということです。そして、民法では債務(借金や損害賠償義務など)も相続財産の一部とされており、相続人はこれを承継します。つまり、加害者の損害賠償債務と被害者の損害賠償請求権は、それぞれ相続の対象となります。

被害者の相続人の権利、加害者の相続人の義務

被害者側:損害賠償請求権は、被害者が亡くなった場合でも、その相続人が加害者に対して損害賠償を請求できます。但し、精神的損害に対する慰謝料請求権は、被害者が請求する前に亡くなった場合、相続されないとされることもありますので要注意です。

加害者側:加害者が亡くなった場合でも、その損害賠償義務は相続人に引き継がれます。

加害者の相続人全員が相続放棄したら

加害者が亡くなり、その相続人全員が相続放棄をした場合、損害賠償債務を含むすべての債務は原則として相続されません。そのような場合には国による被害者救済制度が存在します。代表的なものが以下の制度です。

犯罪被害者等給付金制度(警察庁)

この制度は、故意の犯罪行為によって生命や身体に重大な被害を受けた被害者や遺族に対して、国が一時金を支給するものです。

対象となる被害は、死亡(遺族給付金)、障害、重傷病です。日本国内で発生した故意の犯罪行為(殺人、傷害など)であること、被害者が日本国籍を有するか、日本国内に住所があること(外国人でも一定条件で対象)が要件であり、支給額は、犯罪被害者の年齢や勤労による収入の額などに基づいて算定されます。申請は、犯罪行為による死亡、重傷病又は障害の発生を知った日から2年を経過したとき、又は当該死亡、重傷病又は障害が発生した日から7年を経過したときはできませんので注意が必要です。

被害回復給付金制度(法務省)

詐欺や横領などの財産犯によって損害を受けた被害者に対し、加害者から押収・没収された財産を原資として、国が給付金を支給する制度です。

対象となる犯罪は、詐欺、恐喝、横領などの財産犯、加害者が刑事裁判で有罪となり、財産が押収・没収された場合です。被害者が申請し、審査を経て給付金が支給されることとなります。

犯罪に巻き込まれた場合には損害も大きく、損害賠償や補償も含めた事件解決までに相当の時間と労力が必要です。犯罪に巻き込まれないように日頃から注意しましょう。

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