遺産分割協議が終わってないのに故人のお金を勝手に使った

相続

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

相続が開始し、葬儀などの法要が一段落すると、具体的に遺産分割の協議が始まります。故人の財布を預かっていた人が、ほかの相続人の承諾なしに故人のお金を使ってしまった場合は、どのような対応になるのでしょうか。

共有財産を侵害したことになる

被相続人が亡くなった時点で、その財産は相続人全員の共有状態になります(民法第898条)。そのため、遺産分割が完了するまでは、相続人の一人が勝手に預金を引き出すことは原則として認められません。遺産分割協議の成立前に、被相続人の預金を勝手に使ってしまった場合は他の相続人から不当利得返還請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。

正当な理由があれば認められることもある

他の相続人に許可、承諾は取らなかったとしても、正当な理由があれば認められると考えられます。例えば、「葬儀費用に使った」、「病院代を支払った」など、被相続人や相続人のために使った場合などです。その場合でも、領収書や明細書などの証拠が必要です。

故人の財産を管理する上での注意点

現金も「相続財産」であることを認識する

財布の中の現金やタンス預金も、預貯金や不動産と同様に遺産分割の対象です。相続人全員の共有財産とみなされるため、勝手に使うことはできないことを覚えておきましょう。

中身の記録・保管を徹底する

財布の中の現金やカード類は、写真で記録を残す、金額をメモするなど、透明性を確保しましょう。他の相続人に報告し、保管場所や管理者を明確にすることが大切です。

相続人間での合意形成が重要

財布の現金を使う場合は、相続人全員の同意を得ることが原則です。口頭ではなく、書面での同意書やLINEなどの記録を残しておくと安心です。

最終的には遺産分割協議で正式に扱う

財布の現金も、遺産分割協議書に記載して分割対象として明記するのが望ましいです。「現金〇万円は○○が管理し、葬儀費用に充てる」など、具体的に記載することで後の紛争を防げます。

本人の生前から預かっていた場合

生前に本人から財布や現金を預かっていた場合でも、委託の事実や使途の記録が必要です。本人の意思に基づく支出であることを証明できるように、預かっている金額や使途を証明できるような準備も必要です。

大切なことは記録を保持し、故人のために使用したことを証明できるような備えをしておくことです。

取り急ぎの場合の預貯金払戻し制度(2019年施行)

人が亡くなると、葬儀をおこなったり、病院や施設などへの費用の支払いが発生します。金額も100万円を超えるような大きな額になることが多いかと思います。

このような場合には、被相続人(亡くなった人)の預貯金から支払うことが望ましいですが、金融機関は被相続人の死亡を知った時点で被相続人の預金口座を凍結してしまいます。こうなると、遺産分割協議が成立し、預金を受け取ることになった相続人が権限を証明する書類をもって金融機関に対して口座の相続手続きをするか、相続人全員の合意をもって口座凍結を解除する手続きを行う必要があります。このような状態では大変な時間を要してしまい、葬儀業者や病院などへの支払いが遅延することも考えられます。

上記のような不都合が起こらないように、2019年の法律改正で一定額(1つの金融機関で最大150万円)までは相続人間の合意なく被相続人の預貯金の払戻しができるようになりました。計算式は以下のとおりです。

払戻し可能額=相続開始時点での預貯金総額×3分の1×払戻しを求める相続人の法定相続分

この制度により、金融機関では被相続人の口座からの払戻しに応じることになりますのでぜひ知っておくとよいでしょう。

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