みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
配偶者は常に相続人となりますが、子供がいれば配偶者とその子供が法定相続人となります。しかし、子供がいない場合で、配偶者である故人の直系尊属(親や祖父母など)がすでに亡くなっている場合は、配偶者である故人の兄弟姉妹が法定相続人となります。
この場合、遺産分割協議が思うようにいかなかったり、残された配偶者と義兄弟間のトラブルになったり、様々な問題を生じることになりかねません。こういた問題にあらかじめ対応する必要があるのです。
相続財産を配偶者だけに相続させたい
兄弟姉妹が相続人となる場合においては、兄弟姉妹に相続させるのではなく、配偶者だけに相続させたいと考える方も多いのではないでしょうか。相続においては兄弟姉妹には「遺留分」(法律で決められた最低限の取り分)がありません。そのため、「たすき掛け遺言書」を作成することで、 夫または妻に全財産を相続させることが可能となります。
たすき掛け遺言とは
「たすき掛け遺言」とは、夫婦それぞれが自分の財産を配偶者にすべて相続させる内容の遺言書を作成することを指します。まるで“たすき”を掛け合うように、互いに相手へ財産を託す形からこの名前がついています。
配偶者を確実に守る:どちらが先に亡くなっても、残された配偶者が財産を受け取れるようにすると同時に、遺産分割の混乱を防ぎ、財産の散逸を防ぐことになります。
たすき掛け遺言の例
【夫の遺言】
第◯条
遺言者は、遺言者が相続開始時に有する不動産及び預貯金債権等を含む財産全部を、遺言者の妻 日本花子(昭和◯◯年◯月◯日生)に相続させる。
【妻の遺言】
第◯条
遺言者は、遺言者が相続開始時に有する不動産及び預貯金債権等を含む財産全部を、遺言者の夫 日本太郎(昭和××年×月×日生)に相続させる
【注意点】予備的遺言を忘れずに。
いずれか一方が先に亡くなった場合、残された方の遺言は相続人がいないことになりますので無効になります。例えば、夫が先に亡くなった場合、妻の「自分のすべての財産を夫に相続させる」という遺言は、夫がすでにいないので無効となります。その場合に備え、次のような予備的遺言をしておく必要があります。予備的遺言とは、「第一の相続人(通常は配偶者)がすでに亡くなっていた場合に、次に誰に財産を渡すか」を指定する遺言です。
【夫の予備的遺言】
第〇条
遺言者の死亡以前に前記妻花子が死亡した場合は、遺言者のすべての財産を、遺言者の甥である日本一郎(平成◯◯年◯月◯日生 住所 東京都〇〇市●●町1-1-1)に遺贈する。
【妻の予備的遺言】
第〇条
遺言者の死亡以前に前記夫太郎が死亡した場合は、遺言者のすべての財産を、遺言者の甥である日本一郎(平成◯◯年◯月◯日生 住所 東京都〇〇市●●町1-1-1)に遺贈する。
たすき掛け遺言でトラブルを防ぎ、自分の財産を希望通りに
以上のとおり、子供がいないご夫婦の場合、 たすき掛け遺言がとても有効です。兄弟姉妹が相続人になると、相続手続きが難航したり、トラブルになる可能性もあります。このような「たすき掛け遺言」 で夫婦がお互いに全財産を相続できるようにするとともに、予備的遺言をすることで、自分が希望する人に財産を承継させることができるようになります。

