みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
病院で遺言書を作成したいというケースがあります。遺言者の状態、時間的余裕にもよります。
遺言の方法
遺言者が疾病等により病院に入院又は一時的に病院にいる際に遺言書を作成したいとき、どのような方法があるのでしょうか。
- 自筆でき、時間的余裕もある状態のとき 自筆証書遺言又は公正証書遺言
- 自筆できないが、時間的余裕はあるとき 公正証書遺言
- 命の危機が迫っており自筆できない状態 危急時遺言
自筆でき、時間的余裕もあるときは「自筆証書遺言書」か「公正証書遺言」
自筆証書遺言:財産、相続人、遺言執行者などを決め、本人が全文を自筆で書き、署名・押印します。財産目録はパソコンでの作成も認められています。
自筆証書遺言は費用がかからず、すぐに作成できます。但し、法的な要件を満たさないと無効になるリスクもあり、家庭裁判所の検認が必要となります。遺言執行者の記載や包括条項を入れておくなどの知識も必要となるでしょう。
公正証書遺言(病院出張):あらかじめ財産目録、相続人情報、遺言内容の希望を整理し、遺言書の文案を作成しておき、公証人と連絡を取り、内容を確定させてから公証人が病院に出張し、病院内で公正証書を作成してくれる方法です。これには証人2名の立会い(利害関係のない成人)が必要で、法的には最も確実で家庭裁判所の検認も不要です。なお、推定相続人等は証人になれません。公正証書に費用もかかり、公証人の出張費用も発生します。
自筆できない場合の口述による公正証書遺言
自筆できない場合にも公正証書遺言が可能です。遺言者が口頭で内容を伝え、公証人がそれを文書にまとめる方式です。遺言者が署名できない場合でも、公証人が代筆することが認められており、その旨を遺言書に明記することで法的に有効となります。
また、すでに述べましたが、証人2名の立会い(利害関係のない成人)、検認も不要。公正証書に費用もかかり、公証人の出張費用も発生します。
危急時遺言
危急時遺言は、死が差し迫った状況で通常の遺言方式が取れない場合に限り認められる特別な遺言方式です。民法第976条に基づき、厳格な要件を満たすことで法的に有効とされます。
危急時遺言の作成要件
- 死亡の危急に迫っていること:病気やケガなどで、命の危険が差し迫っている状況であることです。
- 証人3名以上の立会い:利害関係のない成人が3人必要となります(推定相続人・受遺者・その配偶者・直系血族などは不可)。従って、病院に付き添った家族などは証人になれないので注意が必要です。医師や看護師に証人を依頼するのは、迅速に対応するための現実的な選択肢です。
- 遺言内容の口授(口頭で伝える):遺言者が証人の1人に対して、遺言の内容を口頭で伝えます。
- 証人1名による筆記:口授を受けた証人が、遺言内容を正確に書面に記録する。
- 書面の確認:作成された書面を、遺言者および他の証人に読み聞かせるか、閲覧させて内容を確認させます。
- 証人全員の署名・押印:内容に誤りがないことを確認したうえで、証人全員が署名・押印します。
- 家庭裁判所への確認申立て(20日以内):遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人が家庭裁判所に「確認の審判」を申立てる必要があります。危急時遺言が遺言者の真意に基づくかを判断するものです。
- 遺言者が死亡したのちの「検認手続き」:家庭裁判所による検認手続きが必要になります。遺言書の形式・存在を確認し、偽造・変造を防止するためです。
意思能力の確認が重要ですので、医師の診断書やビデオ録画が有効な補強資料になります。また、遺言者が6か月以上生存した場合は、普通方式で遺言できるとみなされ、危急時遺言は無効になりますので注意が必要です。
いざという時のためにも遺言書の作成を
病院における遺言書の作成についてまとめましたが、実際、病気やケガの状態で冷静に遺言書を作成することは難しいものと考えられます。いざというときに備えて平時に遺言を作成しておくことをお勧めします。

