みなさんこんにちは。いかがおすごしでしょうか。
民法第877条において、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定められています。それでは、養子と実親の間では扶養義務があるのでしょうか。実親との親子関係が継続している普通養子の場合は、法的にも認められている義務であり、状況によっては扶養が求められる場合もあると考えられます。
扶養とは
民法では、夫婦、親子、兄弟などの一定の親族範囲内において、未成年、高齢、障害、病気、失業などのために「経済的に自立できない親族」を扶養する義務を課しています。
※公的扶助とは
公的扶助とは、生活保護法による経済的困窮者への扶助のことです。世帯を単位として健康で文化的な生活水準を維持することができない人に対する国、自治体の扶助です。この公的扶助は、収入・資産・扶養関係などを総合的に判断し、生活が困窮していると認められた人に対して実施されます。親族からの援助が受けられないことも条件ですので、最後の手段となります。ちなみに生活保護の要件は、
- 最低生活費以下の収入 厚生労働省が定める「最低生活費」より世帯の収入が少ないこと。地域や家族構成によって金額は異なります。
- 働けない事情がある 病気・障害・高齢などで働くことが困難な場合。
- 活用できる資産がない 預貯金・土地・持ち家・車などを生活費に充ててもなお困窮していること。例外的に持ち家や車の所有が認められるケースもあります。
- 他制度を利用しても困窮 年金・手当・公的融資制度などを活用しても生活が維持できない場合。
- 親族からの援助が受けられない 扶養義務者(親・子・兄弟など)からの支援が受けられない、またはDVなどの事情で援助が困難な場合。
私的扶助には生活保持義務と生活扶助義務がある
- 生活保持義務とは 自分と同じ水準の生活を維持する(配偶者・未成年の子など)義務です。
- 生活扶助義務とは 自分の生活を犠牲にしない、余力の範囲で援助する(兄弟姉妹・高齢の親など)義務です。こちらの場合の生活水準は文化的最低限度の生活水準に足る援助となります。
扶養義務の発生要件
①一定の親族関係にあること 上記のとおり、直系血族、兄弟姉妹は相互に扶養する義務があります。
②扶養権利者(扶養される者)が扶養を必要としていること 自分の収入や資産だけでは生活を維持できず、他者の経済的支援が必要な状態を指します。
③扶養義務者(扶養する者)に扶養するだけの経済的能力があること 生活保持義務関係にある場合は標準家計費を超える資力があること、生活扶助義務関係にある場合は相応の生活になお余力があることを指します。
④扶養権利者が扶養を請求していること 未成熟の子の場合は請求は必要なしと思われますが、それ以外の場合には扶養を受ける意思があることが条件となります。扶養を受ける意思がないのにも関わらず親族が一方的に扶養することは必要がありません。
実親を扶養する
直系血族(親・子)間には互いに扶養義務がありますので、普通養子縁組では、養親との親子関係が成立しても、実親との親子関係は消滅しないため、扶養義務は残ります。
実親が高齢や病気などで働けず、生活が困難し経済的支援が求められる場合、養子が生活扶助として経済的支援を行うことが法的にも社会的にも求められると思われます。
では養親と実親のどちらを優先するか
法的な扶養義務の優先順位(普通養子の場合)
養子が実親と養親の両方と法的な親子関係を持つ場合、次のような判断がされます:
| 親の立場 | 扶養義務の優先度 | 備考 |
|---|---|---|
| 養親 | 第一次的扶養義務者 | 養子縁組により親権・扶養責任を引き受けたため |
| 実親 | 第二次的扶養義務者 | 養親が扶養できない場合に限り、実親に義務が生じる |
つまり、養子が親を扶養する場合も、養親が優先されるのが原則です。
- 養親が高齢や病気などで生活困難になった場合、養子はまず養親を扶養する責任があります。
- 実親が困窮していても、養親の扶養が優先され、実親への扶養は養親の扶養が不要な場合に限られるとされています。
- ただし、道徳的、感情的な判断から養子が自発的に実親を扶養することは可能と思われます。

