遺言(いごん または ゆいごん)とは、自分が亡くなった後に、自分の財産を誰にどのように託すかなどを正式に伝えるための意思表示です。法律的には「遺言書」という形で残すことが多く、日本の民法でも厳格なルールが定められています。遺言は人の最終意思の表示として、遺言者の死後に効力を生じるものです。

遺言でできること

遺言でできる主な法律行為(法定遺言事項)は、財産行為だけでなく、身分の関することや祭祀承継にかんすることなども指定することができます。

分類内容
相続に関すること- 相続分の指定(民法902条)
- 遺産分割方法の指定・禁止(民法908条)
- 特定財産承継遺言(民法1014条)
- 遺贈(民法964条)
- 遺留分に関する意思表示(民法1047条)
身分に関すること- 子の認知(民法781条2項)
- 推定相続人の廃除・取消(民法893条・894条)
- 未成年後見人・後見監督人の指定(民法839条・848条)
遺言の執行に関すること- 遺言執行者の指定(民法1006条)
- 執行者の権限や報酬に関する定め(民法1014条・1018条)
その他- 祭祀承継者の指定(民法897条)
- 保険金受取人の変更(保険法44条)
- 一般財団法人設立の定款作成(一般社団・財団法人法152条)
- 信託の設定(信託法3条2号)

なお、遺言は本人の一方的な意思表示で成立する「単独行為」です。つまり、相手の同意がなくても有効です。たとえば、遺贈(財産を譲ること)は、受け取る人の同意がなくても遺言書に書けば成立します。

遺言書を作成したほうが良い場合

次のような場合は、遺言書の作成をしておいたほうが良いと考えられます。それは、望んだとおりに財産が分けられない、遺産分割協議に時間がかかってしまう、相続人間で争いが発生してしまうなど、トラブルにつながる可能性があるからです。

「不動産など分割が難しい財産がある場合」:居住用の土地家屋のほか、収益用不動産などがある場合は、どの不動産を誰に相続させるかをあらかじめ遺言で指定しておいたほうがよいでしょう。相続人間での分割の際のトラブルを防ぐことができます。

「子のいない夫婦で遺産をすべて生存配偶者にわたしたい場合」例えば、子がいない夫婦の一方が亡くなった場合、民法では配偶者と亡くなった方の親、その親がすでに亡くなっていれば亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります。配偶者だけに相続させたい場合は、配偶者だけに相続させる旨の内容を遺言しておけばよいでしょう。特に亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分(一定の相続人のために法律上必ず留保されなければならない遺産の一定割合)がないので、遺産の散逸、亡くなった方の兄弟とのトラブルを防ぐことができます(「お子さんのいないご夫婦の「たすき掛け遺言」」をご参考)。

「内縁の配偶者へ財産をわたしたい場合」:内縁の配偶者は法律上の配偶者ではないため相続人とはなりません。内縁の配偶者へ財産をわたしたい場合には遺言で財産を遺贈することができます。

「再婚したが、前の配偶者との間に子がいる場合」:例えば前妻との間の子も、現在の妻との間の子と同様に相続人ですので、遺留分にも留意して遺言をしておくとトラブルを防ぐことになるでしょう。

「会社の経営者や事業主で、事業を承継させたい場合」:事業に関する資産、経営資本を誰に引き継ぐかを遺言で定めておくと承継がスムーズにいくでしょう。

「相続人が不在のとき」:相続人が不在の場合、財産は国庫に帰属することになります。

「相続人同士の仲が悪く、相続をめぐって対立が予想される場合」:あらかじめ遺言をすることで、相続発生後のトラブルを防ぐことができます。

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