特定技能とは、日本の特定の産業分野で人材不足を補うために設けられた在留資格です。2019年に導入され、一定の技能や知識を持つ外国人が日本で働くことを目的としています。

※特定技能と技能実習の違い

技能実習と特定技能にはいくつかの違いがあります。

項目技能実習特定技能
目的開発途上国への技術移転を目的とした国際貢献日本国内の人手不足解消
在留期間最長5年(1号:1年、2号:2年、3号:2年)1号:通算5年、2号:上限なし
転職の可否原則不可同じ業種内で可能
受け入れ職種88職種161作業16業種(特定技能1号)、11業種(特定技能2号)
給与日本の最低賃金以上、日本人と同等以上の待遇が必要日本の最低賃金以上、日本人と同等以上の待遇が必要
家族帯同不可2号のみ配偶者・子どもの帯同が可能
受け入れ方法監理団体を通じて海外の送り出し機関と提携制限なし(企業による直接採用も可能)

技能実習は、外国人が日本で技術を習得し、母国へ持ち帰ることを目的とした制度ですが、特定技能は日本国内の労働力不足を補うための制度です。そのため、特定技能の方が転職の自由度が高く、長期的な在留が可能となっています。

特定技能の種類

  • 特定技能1号:相当程度の知識や経験を必要とする業務に従事する外国人向け。最大5年間の在留が可能で、家族の帯同は認められません。
  • 特定技能2号:熟練した技能を要する業務に従事する外国人向け。更新可能で、家族の帯同が認められます。

特定技能1号の職種

  • 介護:高齢者や障害者の介護業務
  • ビルクリーニング:建物内部の清掃業務
  • 工業製品製造業:機械金属加工、電気機器組立てなど
  • 建設:土木、建築、配管など
  • 造船・舶用工業:船舶の製造・修理
  • 自動車整備:自動車の点検・修理
  • 航空:空港グランドハンドリング、航空機整備
  • 宿泊:ホテル・旅館のフロント業務、客室清掃
  • 農業:野菜・果物の栽培、畜産業
  • 漁業:漁業・養殖業
  • 飲食料品製造業:食品加工、品質管理
  • 外食業:レストランでの調理・接客
  • 自動車運送業:トラック・バスの運転
  • 鉄道:鉄道車両の整備・運行管理
  • 林業:森林管理、伐採作業
  • 木材産業:木材加工、製材業務

特定技能2号の職種

  • 建設
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業
  • ビルクリーニング
  • 工業製品製造業

特定技能2号は、特定の分野で高度な技能を持つ外国人が長期間働くことを可能にする在留資格です。特定技能1号と異なり、在留期間の更新に制限がなく、一定の条件を満たせば家族の帯同も認められます。

特定技能2号では、特定の分野で熟練した技能を持つことが求められます。以下は、各分野における高度な技能の具体例です:

  • 建設業:型枠施工、鉄筋施工、建築大工、とび工事などの現場管理や指導業務
  • 造船・舶用工業:溶接、鉄工、塗装、機械組立てなどの工程管理や品質管理業務
  • 自動車整備:エンジン・トランスミッションの分解・組立、故障診断、修理指導
  • 航空業:航空機整備、エンジン点検、機体構造修理、空港グランドハンドリング業務
  • 宿泊業:ホテルの運営管理、接客指導、施設管理、サービス品質向上業務
  • 農業:高度な栽培技術、病害虫管理、農業機械の操作・保守
  • 漁業:漁船の操縦、漁具の管理、魚の加工技術
  • 飲食料品製造業:食品衛生管理、製造ラインの監督、品質管理業務
  • 外食業:調理技術の指導、メニュー開発、店舗運営管理
  • ビルクリーニング:清掃作業の監督、衛生管理、設備メンテナンス
  • 工業製品製造業:機械加工、金属プレス加工、電気機器組立て、品質管理業務

これらの業務では、単なる作業者ではなく、現場の管理や指導ができるレベルの技能が求められます。

特定技能2号の熟練した技能を証明するためには、以下のような書類が必要になります:

  • 技能評価試験の合格証明書(各分野で定められた試験の合格証)
  • 実務経験証明書(企業が発行する、一定期間の業務経験を証明する書類)
  • 資格証明書(業界団体や公的機関が発行する技能資格の証明書)
  • 職務経歴書(過去の職務経験を詳細に記載した書類)
  • 推薦状(企業や業界団体からの推薦書)
  • 研修修了証(特定の技能研修を受講・修了したことを証明する書類)

特定技能のビザ取得プロセス

1. 要件の確認

  • 希望する業種が特定技能の対象分野であるか確認
  • 技能試験・日本語試験の合格(技能実習2号修了者は免除)
  • 健康状態や経歴の確認

2. 雇用契約の獲得

  • 日本国内の企業と雇用契約を締結
  • 雇用条件が法令に適合していることが必要

3. 必要書類の準備

  • 在留資格認定証明書交付申請書(海外から呼び寄せる場合)
  • 証明写真(規定サイズ)
  • パスポートのコピー
  • 技能試験・日本語試験の合格証明書
  • 雇用契約書・雇用条件書
  • 受入れ企業の登記事項証明書、決算書、社会保険・労働保険関連書類
  • 支援計画書(特定技能1号の場合は必須)
  • その他、分野ごとに追加書類あり

4. 在留資格認定証明書の申請

  • 受入れ企業が入管に申請書類を提出
  • 国内在住の場合は「在留資格変更許可申請」

5. 審査・許可

  • 入管が書類審査を実施
  • 追加資料を求められることもある
  • 許可されると認定証明書が交付される

6. 査証(VISA)申請・日本入国

  • 認定証明書とパスポートを持参し、現地の日本大使館・領事館で査証申請
  • 査証が発給されたら日本へ入国
  • 空港で在留カード交付

登録支援機関とは

登録支援機関とは、特定技能1号の外国人が日本で円滑に働けるように、受け入れ企業から委託を受けて支援業務を行う機関です。特定技能外国人の職業生活や日常生活をサポートし、適切な環境で働けるように支援します。

登録支援機関の主な業務

  • 事前ガイダンス:労働条件や生活環境について説明
  • 入国・出国時の送迎:空港から住居や職場への移動支援
  • 住居確保・契約支援:賃貸契約のサポートや保証人の提供
  • 生活オリエンテーション:日本のルールやマナーの説明
  • 公的手続きの同行:住民登録や社会保険の手続き支援
  • 日本語学習の機会提供:語学学校の案内や教材の提供
  • 相談・苦情対応:職場や生活の悩み相談
  • 日本人との交流促進:地域イベントへの参加支援
  • 転職支援:雇用契約解除時の再就職サポート
  • 定期的な面談・報告:労働環境の確認と行政機関への報告

登録支援機関は、企業が特定技能外国人を受け入れる際に必要な支援を代行することで、スムーズな雇用を実現します。

技能実習から特定技能への在留資格変更

技能実習から特定技能への在留資格変更は可能ですが、いくつかの条件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです:

  • 技能実習2号を良好に修了していること(技能実習1号からの移行は不可)
  • 技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務に関連性があること
  • 試験免除の適用:技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能1号の技能試験および日本語試験が免除されることがあります

在留資格変更の手続き

  1. 雇用契約の締結:特定技能1号の基準に適合する雇用契約を結ぶ
  2. 支援計画の策定:企業が特定技能外国人の生活・職場支援計画を作成
  3. 必要書類の準備:技能実習修了証明書、雇用契約書、支援計画書など
  4. 在留資格変更許可申請:地方出入国在留管理局へ申請
  5. 審査・許可:通常2〜3ヶ月程度で審査が完了し、新しい在留カードが発行される

技能実習から特定技能への移行は、外国人労働者にとって長期的なキャリア形成の機会となります。

留学から特定技能への在留資格の変更

留学から特定技能への在留資格変更は可能ですが、いくつかの条件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです:

  • 特定技能の対象分野での就職が決まっていること
  • 特定技能1号の技能試験および日本語試験に合格していること
  • 納税・社会保険の支払い状況が適正であること
  • 雇用契約が特定技能の基準に適合していること

在留資格変更の手続き

  1. 技能試験・日本語試験の合格:特定技能の対象分野に応じた試験を受験し、合格する
  2. 雇用契約の締結:特定技能1号の基準に適合する雇用契約を結ぶ
  3. 必要書類の準備:納税証明書、雇用契約書、技能試験合格証明書など
  4. 在留資格変更許可申請:地方出入国在留管理局へ申請
  5. 審査・許可:通常2〜3ヶ月程度で審査が完了し、新しい在留カードが発行される

留学生向けの特定技能移行に関する相談窓口も設置されているため、詳細は出入国在留管理庁の公式ページをご覧ください。

育成就労制度について

育成就労制度とは、日本の特定産業分野で外国人労働者を育成し、特定技能への移行を促進するための新しい制度です。これは、従来の技能実習制度を発展的に解消し、より柔軟な労働環境を提供することを目的としています。

育成就労制度の施行時期については、改正法の公布日(令和6年6月21日)から起算して3年以内とされていますが、具体的な施行日は未定です。
また、育成就労制度に関する主務省令の公表時期も未定ですが、施行までに十分な準備期間を確保した上で、制度利用者が円滑に利用できるよう進められる予定です。

育成就労制度の特徴

  • 目的:技能習得と人材確保を両立
  • 対象分野:介護、建設、農業、外食業などの特定産業分野
  • 在留期間:原則3年以内(特定技能への移行が可能)
  • 転籍の自由度:一定の条件下で転職が可能
  • 特定技能への移行:育成期間終了後、特定技能1号へ移行可能

この制度は、技能実習制度の問題点を改善し、より柔軟な労働環境を提供することを目的としています。

育成就労制度が施行されると、以下のような主な変更が行われます:

  • 技能実習制度の廃止:従来の技能実習制度(技能実習1号~3号)が廃止され、新たに「育成就労」という在留資格が創設されます。
  • 制度目的の変更:技能実習制度は「国際貢献(発展途上国への技能移転)」を目的としていましたが、育成就労制度では「人手不足分野における人材育成と人材確保」が目的となります。
  • 転籍の自由度向上:技能実習制度では転籍(就労先の変更)が厳しく制限されていましたが、育成就労制度では一定の条件下で転籍が認められるようになります。
  • 特定技能制度との連続性:育成就労で必要な技能・日本語能力を身につけた後、特定技能へ円滑に移行できるキャリアパスが整備されます。
  • 監理団体の見直し:技能実習制度の監理団体は「監理支援機関」として新たな許認可を得る必要があり、管理体制が強化されます。
  • 対象分野の変更:育成就労制度で外国人を受け入れるには、その業種が「育成就労産業分野」に該当している必要があります。具体的な対象分野は今後主管省庁による検討を経て政省令で定められます。

この制度変更により、外国人労働者のキャリア形成がより明確になり、日本国内の人材不足解消に貢献することが期待されています。

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